はじめに
こんにちは、福耳社労士の鈴木正行です。キャリアアップ助成金を利用する上で、就業規則の作成には特に注意が必要です。令和4年10月の改正に伴い、有期雇用労働者・正規雇用労働者の定義を明確にしなければなりません。助成金の申請を考えている労務管理の担当者や中小企業の経営者の皆様、そしてIT企業、建設、運輸、飲食店の経営者の方々に向けて、就業規則作成のポイントを解説します。
キャリアアップ助成金のメリットとデメリット
キャリアアップ助成金のメリットは、従業員のスキルアップやキャリア形成を支援することで企業の競争力強化につながる点です。また、助成金を受けることで、従業員のモチベーション向上や離職率の低下など、人材育成の効果が期待できます。
一方で、デメリットとしては、助成金の申請手続きが複雑で時間がかかることや、規定に則った就業規則の作成が求められる点です。就業規則の作成における主な注意点を挙げてみます。
就業規則の注意点
1.賞与の規定
正社員の条件について、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」の制度が必要となりました。就業規則における賞与に関する規定の一例は、「6月に昇給を実施する。ただし、昇給を実施する社員は4月から本年3月までの全期間、正社員として勤務した者とし、その期間を評価期間として勤務態度、勤務実績、職務遂行能力を勘案して昇給額を決定する」です。これにより、昇給の対象となる条件や評価基準を明確にすることができます。会社の業績の著しい低下、その他やむを得ない事由により、支給時期を延期したり、または支給しないことが想定される場合、その旨を規定してください。
2.正社員への転換規程
就業規則には、契約社員から正社員への転換規程を設けることが重要です。例えば、契約社員が〇年間勤務し、〇回の評価を受けた後に、評価結果に応じて正社員への転換を行うといった具体的な条件を定めることが有効です。正社員にする際に、面接や筆記試験を行うなどの規定があった方が良いでしょう。
3.雇用区分の明確化
雇用区分の明確化は重要なポイントです。例えば、正社員、契約社員、パートタイマーなどの雇用区分を明確にし、「採用」や「採用選考」に関する規定と合わせて定義することが必要です。これにより、雇用形態ごとの権利や義務を明確化し、労働条件の公平性を確保します。
4. 客観的な昇給基準
昇給に関しても客観的な規定が求められます。就業規則への規定の一例として、「昇給は勤務成績その他が良好な労働者について、毎年●月●日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には行わないことがある」。客観的な昇給基準である必要があり、例えば、「会社が必要と判断した場合には」というのはNGとなります。
まとめ
助成金申請を成功させるためには、就業規則の適切な作成が欠かせません。キャリアアップ助成金の申請では、就業規則に明記された規定をしっかりと実施することが重要です。特に、正社員と有期契約労働者との待遇の差を明確にすることが求められます。解決策を見据えるためにも、就業規則の改定が不可欠です。
助成金申請における原因や課題に直面した際には、具体的な解決策を検討しましょう。そして、助成金申請の手続きが複雑であるため、社会保険労務士に相談することが重要です。専門家のアドバイスを得ることで、スムーズな申請手続きを進めることができます。
助成金申請における就業規則の作成は、企業の人材育成や競争力強化に直結する重要なプロセスです。正確な情報の把握と適切な対応を行い、助成金の活用を進めていきましょう。